日経産業新聞(2001年11月19日分)に掲載
■ 投資家注目のVB
視・障害者向け情報機器
思っていることを直接相手に伝えたい。
目と耳が不自由な人たちの切実な願いだ。
だが、情報伝達法が「触れること」に限られるため、介助者なしで会話するのは今までほぼ不可能だった。
そんな状況を克服しようと開発されたのが日本テレソフト(東京・千代田区、金子秀明社長)が開発した、目と耳が不自由な人向けのマルチ情報機器「マルチブレイル」だ。
■ 点字と文字を自動変換
本体上の点字キーと点字ディスプレイを使い、視覚・聴覚の二重障害者や視覚障害者が健常者と意思伝達できる。点字が分かる障害者なら誰でも使うことができる。
本体とパソコンをケーブルでつないで使う。漢字やかなの通常の文書を点字に変換する自動点訳ソフトや本体を起動させるための専用ソフトを事前にインストールする必要がある。
健常者がパソコンで入力した文章は、自動点訳ソフトが点字に変換する。点字データがインターネットを通じてマルチブレイルに送信され、障害者が読めるよう、「点字ディスプレイ」に点が浮かび上がる仕組みだ。
反対に障害者がマルチブレイルで入力した点字データをパソコンに送信すると、自動的に文字データに変換。カタカナとして表示するため、点字がわからない健常者でも点字で入力したメッセージを理解することができる。
健常者と障害者の会話のほか、遠隔地の障害者同士がリアルタイムでコミュニケーションをはかることも可能だ。
福祉機器開発で注目される同社だが、1986年の発足当時はゲームソフトや経理ソフトを手がけていた。
しかし売り上げが伸び悩んだことから、1990年代初めに事業を転換、ネットを使った電子地図ソフト開発に軸足を移した。
「数あるソフト会社の中でいかに独自性を出すか」。悩んでいた金子社長が耳にしたのがある区役所の障害福祉課職員が漏らした「健常者が点字を作れるソフトがない」という言葉だった。
以来福祉機器を開発。自動点訳ソフトや点字文書を印刷する点字プリンター、点字読み取り装置などを次々に商品化。今では電子地図とともに同社の事業の柱に育っている。
国内の視覚・聴覚二重障害者は約二万人(厚生労働省推計)とされるが、点字が分かる人の数は限られる。機器は量産が難しく、必然的に価格は高めとなる。
マルチブレイルの価格も八十万円で気軽に買える値段とは言えない。そこで購入の補助金の支給が受けられるよう、同社は現在厚生労働省に在宅福祉機器指定の申請をしている。
スケールメリットを追求するため、海外市場の開拓にも積極的だ。既に米国、中国、韓国、ドイツで現地の代理店と契約し、 2002年をめどに各国で販売を開始する。マルチブレイルのように目や耳が不自由な人向けの情報機器は世界でも珍しいという。
「小さなベンチャー企業でも世界で存在感を出せることを示したい」と語る金子社長は今後、海外進出を加速させる方針だ。
視・障害者向け情報機器
思っていることを直接相手に伝えたい。
目と耳が不自由な人たちの切実な願いだ。
だが、情報伝達法が「触れること」に限られるため、介助者なしで会話するのは今までほぼ不可能だった。
そんな状況を克服しようと開発されたのが日本テレソフト(東京・千代田区、金子秀明社長)が開発した、目と耳が不自由な人向けのマルチ情報機器「マルチブレイル」だ。
■ 点字と文字を自動変換
本体上の点字キーと点字ディスプレイを使い、視覚・聴覚の二重障害者や視覚障害者が健常者と意思伝達できる。点字が分かる障害者なら誰でも使うことができる。
本体とパソコンをケーブルでつないで使う。漢字やかなの通常の文書を点字に変換する自動点訳ソフトや本体を起動させるための専用ソフトを事前にインストールする必要がある。
健常者がパソコンで入力した文章は、自動点訳ソフトが点字に変換する。点字データがインターネットを通じてマルチブレイルに送信され、障害者が読めるよう、「点字ディスプレイ」に点が浮かび上がる仕組みだ。
反対に障害者がマルチブレイルで入力した点字データをパソコンに送信すると、自動的に文字データに変換。カタカナとして表示するため、点字がわからない健常者でも点字で入力したメッセージを理解することができる。
健常者と障害者の会話のほか、遠隔地の障害者同士がリアルタイムでコミュニケーションをはかることも可能だ。
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福祉機器開発で注目される同社だが、1986年の発足当時はゲームソフトや経理ソフトを手がけていた。
しかし売り上げが伸び悩んだことから、1990年代初めに事業を転換、ネットを使った電子地図ソフト開発に軸足を移した。
「数あるソフト会社の中でいかに独自性を出すか」。悩んでいた金子社長が耳にしたのがある区役所の障害福祉課職員が漏らした「健常者が点字を作れるソフトがない」という言葉だった。
以来福祉機器を開発。自動点訳ソフトや点字文書を印刷する点字プリンター、点字読み取り装置などを次々に商品化。今では電子地図とともに同社の事業の柱に育っている。
国内の視覚・聴覚二重障害者は約二万人(厚生労働省推計)とされるが、点字が分かる人の数は限られる。機器は量産が難しく、必然的に価格は高めとなる。
マルチブレイルの価格も八十万円で気軽に買える値段とは言えない。そこで購入の補助金の支給が受けられるよう、同社は現在厚生労働省に在宅福祉機器指定の申請をしている。
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スケールメリットを追求するため、海外市場の開拓にも積極的だ。既に米国、中国、韓国、ドイツで現地の代理店と契約し、 2002年をめどに各国で販売を開始する。マルチブレイルのように目や耳が不自由な人向けの情報機器は世界でも珍しいという。
「小さなベンチャー企業でも世界で存在感を出せることを示したい」と語る金子社長は今後、海外進出を加速させる方針だ。